俺のソース

新聞などに取り上げられた科学ニュースのソースとなった論文を解説少なめで紹介します。 @OrenoReSource で再放送しています

この科学記事が面白かった of the year 2015下半期

新聞等で報道された科学記事の元になった原著論文を提示する「俺のソース」というツイッターアカウントの2015年下半期のダイジェストです。

 

 

 現世人類の出アフリカ以降、ネアンデルタール人と交配しながら世界へ広まっていったという話、面白いですよね。肌の色も髪の色もそれでだいたい説明ついちゃう。

ネアンデルタール人は私たちと交配した

ネアンデルタール人は私たちと交配した

 

 

 

 パンダの動きが緩慢なのはいわゆる甲状腺機能低下症だからという論文で、色々合点がいきますね。甲状腺機能低下症=「神経系、心臓、代謝など各器官の働きが低下し、眠気、記憶障害、抑うつ、無気力を生じる」ですから。エネルギー消費量は少ないし臓器は小型だし腸は短くてササの消化に適合してないし肉食型の腸内細菌叢を持ってるしなかなか交配しないしで、よく絶滅しないもんだと思います。T3とかT4を与えたらクマ並みに元気なパンダになるのでしょうか。

おつかれっ!  毎日パンダ  上野で働くパンダズの全記録

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 浅田次郎が、近代競馬は高速化していて今の追い込み馬は昔の逃げ馬と同等、みたいなことを書いてましたがそうなんですねえ。 

新版 競馬の血統学―サラブレッドの進化と限界

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 メタンは減るし牛は肥えるしいいことづくめじゃないですか!

 

 

 この話が正しいかどうかまだ様子見な感じですが、面白いですね。

系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史 (BERET SCIENCE)

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 脱粒性が低下したから広く栽培されるようになったのか、へえ!ソバでもそういった品種改良されないですかねえ。

栽培植物の自然史―野生植物と人類の共進化

栽培植物の自然史―野生植物と人類の共進化

 

 

 

次はこちら。面白かったわけではないのですが、取り上げる場がここくらいしかないので....

見出しがあまりにも論文を反映していないので、こんな補足をしました。

STAP問題で毎日新聞は評価が上がりましたがこのインフルエンザワクチンの有効性の論文についての記事で評価を下げたのではないでしょうか。

この記事にはいくつも問題点があると思います。元論文を読んでないかあるいは著者に話を聞いても理解できなかったか結論ありきで記事を書いたかではないかと思いますが....なんでこんな見出しになるんでしょう?

例えば…

・「世界的に例がない大規模調査」ではない。

・乳児についてはワクチンの「効果がない」ではなく、「患者数が少なく効果が検証できない」(たしかにアブストでは乳児に効果がない(not effective)と言っていますが...)。

・中学生は感染者が少なく、また主にワクチンの効果が薄いA/H3N2にかかっていたため論文中では解析してない。

・B型に効果が薄いのは予防接種を秋口に受けるため2-4月のB型が流行する頃には効果が薄れているから。

・ワクチンは全般的に有効で、特に1回接種より2回摂取が有効のように思われる。

・13-15歳(中学生)は2回接種ではなく1回接種なので予防効果が低かったと考えられる点。

など論文中でも論じてある点がすっ飛ばされています。

私以外にもこの記事を論じている方が多数いらっしゃいます。

毎日新聞の「インフルワクチン:乳児・中学生に予防効果なし」という記事は間違い - エビ風サイエンスミネストローネ

「インフルエンザワクチンは乳児と中学生には効かない」報道は本当か:話題の論文 拾い読み!:日経Gooday(グッデイ)

インフルエンザ予防接種は効果がありません、という毎日新聞の報道への疑問が満載!! | 五本木クリニック | 院長ブログ

 この論文についてのプレスリリースは慶応大から出されていないように思うんですが、記事にするきっかけは何だったんでしょうか?色々と記者さんに聞いてみたいのでどなたかつてはありませんか?

 

 

 次もインフルエンザワクチンの記事ですが、こちらは面白かったです。毎日新聞は記事公開からひと月経つと有料アーカイブでないと見られなくなる事が多く、この記事もそうなので日経の記事を紹介しておきます。そうか、そもそも培養細胞ではウイルスは増えにくいのか。

基礎疾患をもつ小児に対する予防接種ガイドブック

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予防接種の現場で困らない! まるわかりワクチンQ&A

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 明日から使える豆知識です。はい、ご唱和ください、「地球の樹木は3兆本」。最近はヒトの細胞数について新たに推定した論文もありましたね。これまで60兆個と考えられていましたが、37兆個との結論です(うち26兆個が無核の赤血球→ということは核のある細胞は11兆個)。

よくわかる樹木大図鑑―葉・花・実・樹皮

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ワインの産地じゃなくて酵母株で評価する時代が来るのかもしれないですね。

新しいワインの科学

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 不思議な生き物がいるもんですね。研究自体も仮説からスタートした博打的な感じで面白いです(プレスリリース参照)。既存研究との違いを説明したブログを紹介します。

 

 

 オーキシンの誘導体が!へー!この薬剤、使ってみたいです。

 

 

イヌの体外受精って成功してなかったんですね。

 

 以上、この科学記事が面白かったof the year 2015下半期でした。上半期と本家のツイッターもよろしくお願いいたします(育児が忙しくて更新頻度が下がり気味ですが)。

 

誰もがその先を聞きたくなる理系の話大全 (できる大人の大全シリーズ)

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現代の事例から学ぶサイエンスコミュニケーション:科学技術と社会とのかかわり,その課題とジレンマ

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