この科学記事が面白かった of the year 2015下半期
新聞等で報道された科学記事の元になった原著論文を提示する「俺のソース」というツイッターアカウントの2015年下半期のダイジェストです。
現世人類の出アフリカ以降、ネアンデルタール人と交配しながら世界へ広まっていったという話、面白いですよね。肌の色も髪の色もそれでだいたい説明ついちゃう。
初期現生人類、欧州でもネアンデルタール人と交配か AFP http://t.co/ktYx1MmZvs ヒトとの交雑は欧州でも継続的に起きていた。ゲノムの6~9%がネアンデルタール人由来の4万年前の人骨を発見(nature)→ http://t.co/gUf76DhD0n
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 6月 24
パンダの動きが緩慢なのはいわゆる甲状腺機能低下症だからという論文で、色々合点がいきますね。甲状腺機能低下症=「神経系、心臓、代謝など各器官の働きが低下し、眠気、記憶障害、抑うつ、無気力を生じる」ですから。エネルギー消費量は少ないし臓器は小型だし腸は短くてササの消化に適合してないし肉食型の腸内細菌叢を持ってるしなかなか交配しないしで、よく絶滅しないもんだと思います。T3とかT4を与えたらクマ並みに元気なパンダになるのでしょうか。
パンダはカウチポテト族?省エネレベルはナマケモノ並み AFP http://t.co/ew5xTRyrl8 パンダの活動性はクマに比べ低く臓器も小さい。甲状腺ホルモン合成酵素DUOX2の変異が倦怠感を誘発? (Science)→ http://t.co/1KeHQY4BM6
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 7月 13
浅田次郎が、近代競馬は高速化していて今の追い込み馬は昔の逃げ馬と同等、みたいなことを書いてましたがそうなんですねえ。
競走馬、これまでになく速くなっている 英AFP http://t.co/3BljKAhmv4 1850年以降、特に短距離において速くなっている。ブリーダーが持久力よりスピードに優れている馬を好んでいる?(BIol letter)→ http://t.co/ChpBNpx0VU
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 7月 19
メタンは減るし牛は肥えるしいいことづくめじゃないですか!
3NOPが牛のげっぷ中のメタンを3割減らす ナショジオ http://t.co/swia9dSLvf エサに3-ニトロオキシプロパノールを加えるとげっぷのメタン量を30%削減できる。牛への悪影響はなく体重は増加した。(PNAS)→ http://t.co/QFxnIYYz1Q
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 8月 10
週刊ニューズウィーク日本版 「特集:温暖化 想定外の未来」〈2015年 825号〉 [雑誌]
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2015/08/18
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
この話が正しいかどうかまだ様子見な感じですが、面白いですね。
古細菌の感染症「世界初」 脳脊髄炎で認知症状 - 47NEWS http://t.co/Co3X0kcd6y 4例の脳脊髄炎患者からNGSで古細菌DNAを検出。(Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm)→ http://t.co/OXX2bQ7sGP
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 8月 14
系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史 (BERET SCIENCE)
- 作者: 長谷川政美
- 出版社/メーカー: ベレ出版
- 発売日: 2014/10/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (4件) を見る
脱粒性が低下したから広く栽培されるようになったのか、へえ!ソバでもそういった品種改良されないですかねえ。
オオムギの起源解明 農業生物研・岡山大など 日経 http://t.co/oiVax03iLC 2グループに大別される栽培オオムギの起源は細胞壁を薄くし脱粒性に関わるBtr1とBtr2の変異にそれぞれ由来する(Cell)→ http://t.co/3dztdlOLKu
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 8月 16
次はこちら。面白かったわけではないのですが、取り上げる場がここくらいしかないので....
インフルワクチン:乳児・中学生に予防効果なし 毎日 http://t.co/izrerPgAyW '13-14においてワクチンは主にA型に効果あり。ただし生後6-11ヶ月では効果が低く、集団免疫が重要(PLoS One)OA→ http://t.co/d3dcbB5L8N
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 8月 30
見出しがあまりにも論文を反映していないので、こんな補足をしました。
インフルワクチン論文(続)特に2回摂取が有効。B型に効果が薄いのは秋口に予防接種を受けるため2-4月にB型が流行する頃には効果が薄れいているため。中学生は感染者が少なく、また主にワクチンの効果が薄いA/H3N2にかかっていたため解析してない(効果が無いというのは新聞の誤り?)
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 8月 30
STAP問題で毎日新聞は評価が上がりましたがこのインフルエンザワクチンの有効性の論文についての記事で評価を下げたのではないでしょうか。
この記事にはいくつも問題点があると思います。元論文を読んでないかあるいは著者に話を聞いても理解できなかったか結論ありきで記事を書いたかではないかと思いますが....なんでこんな見出しになるんでしょう?
例えば…
・「世界的に例がない大規模調査」ではない。
・乳児についてはワクチンの「効果がない」ではなく、「患者数が少なく効果が検証できない」(たしかにアブストでは乳児に効果がない(not effective)と言っていますが...)。
・中学生は感染者が少なく、また主にワクチンの効果が薄いA/H3N2にかかっていたため論文中では解析してない。
・B型に効果が薄いのは予防接種を秋口に受けるため2-4月のB型が流行する頃には効果が薄れているから。
・ワクチンは全般的に有効で、特に1回接種より2回摂取が有効のように思われる。
・13-15歳(中学生)は2回接種ではなく1回接種なので予防効果が低かったと考えられる点。
など論文中でも論じてある点がすっ飛ばされています。
私以外にもこの記事を論じている方が多数いらっしゃいます。
毎日新聞の「インフルワクチン:乳児・中学生に予防効果なし」という記事は間違い - エビ風サイエンスミネストローネ
「インフルエンザワクチンは乳児と中学生には効かない」報道は本当か:話題の論文 拾い読み!:日経Gooday(グッデイ)
インフルエンザ予防接種は効果がありません、という毎日新聞の報道への疑問が満載!! | 五本木クリニック | 院長ブログ
この論文についてのプレスリリースは慶応大から出されていないように思うんですが、記事にするきっかけは何だったんでしょうか?色々と記者さんに聞いてみたいのでどなたかつてはありませんか?
レジデントノート 2015年1月号 Vol.16 No.15 インフルエンザ診療のスタンダード! 〜流行前に見直そう! 予防・診断・治療の大原則
- 作者: 忽那賢志
- 出版社/メーカー: 羊土社
- 発売日: 2014/12/13
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
次もインフルエンザワクチンの記事ですが、こちらは面白かったです。毎日新聞は記事公開からひと月経つと有料アーカイブでないと見られなくなる事が多く、この記事もそうなので日経の記事を紹介しておきます。そうか、そもそも培養細胞ではウイルスは増えにくいのか。
インフルワクチン:大量生産可能 予防効果もアップ - 毎日新聞 http://t.co/NQhjMVo6YM リバースジェネティクスにより培養細胞での高増殖性を獲得したインフルエンザウイルスを作出。(Nat commun)OA→ http://t.co/h2KmxSDTOZ
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 9月 4
培養細胞での増殖能を大きく上昇させたインフルエンザウイルスの作出に成功~季節性ワクチン及びパンデミックワクチンの有効性上昇と迅速製造の道筋をつけた~ (東京大学プレスリリース)→ http://t.co/IWJogpPYe1
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 9月 4
- 作者: 永井利三郎(大阪大学名誉教授/プール学院大学短期大学部教授),田邉卓也(田辺こどもクリニック理事長),宮崎千明(福岡市立心身障がい福祉センター長)
- 出版社/メーカー: 診断と治療社
- 発売日: 2015/10/30
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
明日から使える豆知識です。はい、ご唱和ください、「地球の樹木は3兆本」。最近はヒトの細胞数について新たに推定した論文もありましたね。これまで60兆個と考えられていましたが、37兆個との結論です(うち26兆個が無核の赤血球→ということは核のある細胞は11兆個)。
地球の樹木は3兆本、従来推定の約8倍 AFP http://t.co/1AGKy5lERo 高木の本数を数え、人工衛星とスーパーコンピューターの最先端技術を組み合わせて従来の推定より8倍多い3.4兆本と推定(nature)→ http://t.co/hrjpggI4mB
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 9月 11
ワインの産地じゃなくて酵母株で評価する時代が来るのかもしれないですね。
ワインの芳香、大半は酵母に由来AFP http://t.co/DRfErQG1ZL ワインの風味の違いは産地ごとの酵母のジェノタイプの違いでほとんど説明できる (Sci Rep)→ http://t.co/f7XFebqb5q
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 9月 25
不思議な生き物がいるもんですね。研究自体も仮説からスタートした博打的な感じで面白いです(プレスリリース参照)。既存研究との違いを説明したブログを紹介します。
電気で生きる生物、初めて確認…理研 http://t.co/D4TNANustj 鉄酸化細菌を鉄無し、電極存在下におくとシトクロムなどを介してプロトン濃度勾配とNADHをつくりCO2を固定する(Front. Microbiol)→ http://t.co/IbidUR2VOO
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 9月 26
電気で生きる微生物を初めて特定 -微生物が持つ微小電力の利用戦略- (理化学研究所プレスリリース)→ http://t.co/tXOTKvRygs
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 9月 26
オーキシンの誘導体が!へー!この薬剤、使ってみたいです。
難病「ミトコンドリア病」に効用示す物質発見 東北大が治験へ 日経 https://t.co/6WSB3LbLXH オーキシンの誘導体がミトコンドリア病患者由来細胞の寿命を延長する(Tohoku J Exp Med)→ https://t.co/LluQkmCgdB
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 11月 26
ミトコンドリア病に対する新規治療薬の開発 ‐新規化合物 MA-5 はミトコンドリア病モデルマウスの寿命を延長させる‐ (東北大学プレスリリース)→ https://t.co/DdJSTUS3Uw (発展論文)→ https://t.co/bMCfSaMgWi
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 11月 26
娘よ、ゆっくり大きくなりなさい―ミトコンドリア病の子と生きる (集英社新書)
- 作者: 堀切和雅
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/06
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (1件) を見る
イヌの体外受精って成功してなかったんですね。
体外受精で初の子犬誕生、米研究チームが成功 AFP https://t.co/vOqJJC08Oj Mgを添加し精子の活動性と先体反応に改善がみられたことで、体外受精による出産に成功。(PLoS One)→ https://t.co/N3fMMY51KE
— 俺のソース (論文紹介) (@OrenoSource) 2015, 12月 10
よくわかる 犬の遺伝学: 健全性から毛色まで、知って役立つ遺伝の法則
- 作者: 尾形聡子
- 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
- 発売日: 2014/01/20
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
以上、この科学記事が面白かったof the year 2015下半期でした。上半期と本家のツイッターもよろしくお願いいたします(育児が忙しくて更新頻度が下がり気味ですが)。
誰もがその先を聞きたくなる理系の話大全 (できる大人の大全シリーズ)
- 作者: 話題の達人倶楽部
- 出版社/メーカー: 青春出版社
- 発売日: 2015/03/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
現代の事例から学ぶサイエンスコミュニケーション:科学技術と社会とのかかわり,その課題とジレンマ
- 作者: ジョン・K・ギルバート,スーザン・ストックルマイヤー,小川義和,加納圭,常見俊直
- 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
- 発売日: 2015/04/08
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る